夫の浮気が分かったとき、「ほかの夫婦はどのくらい許しているのだろう」と数字を知りたくなることがあります。多数の人が許しているなら自分も許すべきなのか、許さない人が多いなら離婚を選ぶべきなのか。自分だけでは決めきれないとき、割合は客観的な答えに見えます。

しかし、現在確認できる調査から、日本の夫婦全体について『浮気を許すのは何%』と一つの数字で答えることはできません。調査ごとに対象者、質問の言葉、浮気を経験した人かどうか、「許す」の意味が違うからです。

ここでは、出所と調査条件を確認できた二つの民間調査を取り上げます。数字だけを結論にせず、「この割合が何を表し、何を表していないか」を一緒に見ていきます。

確認できた民間調査では、結果に大きな幅がある

成人男女200人への調査では「許す」が32%

2023年に全国の成人男女200人を対象として行われた民間のインターネット調査では、恋人や配偶者の浮気を「許す」と答えた人が64人、全体の32%でした。「許さない」は136人、68%です。

ただし、この200人は既婚者だけではありません。実際に配偶者の浮気を経験した人だけを調べたものでもなく、「浮気をされた場合」を想定した回答です。そのため、この32%を「浮気された夫婦のうち、関係を続けた割合」や「日本の妻が夫を許す割合」と読み替えることはできません。

さらに、公表資料では男女別の人数と全体人数の間に表記上の不整合が見られるため、男女差はこの記事では扱いません。割合を見るときは、数字の細かさより、どの範囲なら無理なく言えるかが大切です。

セックスレスと回答した既婚男女400人では「許す」が12.3%

2024年に、20代から50代の既婚男女のうち、夫婦がセックスレスの状態だと回答した400人を対象にした別の民間調査があります。この調査では、配偶者の浮気を「許す」が12.3%、「仕方がない」が19.3%、「許さない」が45.8%でした。

ここで注意したいのは、対象が既婚者全体ではなく、セックスレスと回答した人に限られていることです。また、「許す」と「仕方がない」が別の選択肢になっています。「仕方がない」を許した人へ足すかどうかで見かけの数字も変わります。

この回答も、実際に浮気を経験した後の行動を追跡したものではなく、意識を尋ねた調査です。したがって「既婚者の12.3%しか関係を続けない」と解釈することはできません。

二つの数字を直接比べてはいけない理由

32%と12.3%を見ると、「調査によって大きく違うのはなぜ」と思うかもしれません。主な理由は五つあります。

調査対象が違う

一つ目は成人男女で、未婚者も含みます。二つ目は、セックスレスと回答した既婚男女です。性別、年代、結婚状況、現在の夫婦関係が違えば、回答の傾向も変わり得ます。

実際の経験と仮定の質問は違う

まだ経験していない状況を想像して答えることと、実際に起きた後で生活を考えて決めることは同じではありません。現実には、子ども、住まい、収入、相手の態度、浮気の期間など多くの条件が加わります。

「許す」の定義が違う

「怒りがなくなる」「夫婦関係を続ける」「離婚しない」「一度は様子を見る」「浮気を正当化する」など、許すという言葉から思い浮かべる内容は人によって違います。回答の選択肢に「仕方がない」があるかどうかでも、数字は変わります。

質問文と選択肢が違う

二択で「許す・許さない」と聞く調査と、「仕方がない」「分からない」など複数の選択肢がある調査を、そのまま比較することはできません。二択なら、迷っている人もどちらかを選ぶことになります。

調査人数と方法に限界がある

紹介した二つは民間のインターネット調査で、200人と400人です。調査として参考にはなりますが、日本のすべての夫婦を正確に代表する公的統計とは言えません。割合を小数点まで見ても、それだけで精密な現実が分かるわけではありません。

「許す」「関係を続ける」「離婚しない」は別のこと

統計を見るとき、最も混同しやすいのが感情と行動です。

許しても、関係を終えることはある

怒りを手放したり、事情を理解したりしても、信頼を再構築するのは難しいと判断して別れる人がいます。相手を恨み続けないことと、夫婦であり続けることは別です。

許せなくても、関係を続けることはある

子ども、経済、住まい、仕事、健康、自分の希望を考え、すぐには離婚せず同じ生活を続ける人もいます。関係を続けたからといって、浮気を許した、忘れた、問題が解決したとは限りません。

保留することも一つの決定

発覚直後に一生の判断を出さず、一定期間を置いて相手の行動と自分の状態を見る人もいます。「今は決めない」は逃げではありません。見直す時期と、それまでに確認することを決めれば、主体的な保留にできます。

離婚を考えることと、すぐ手続を始めることも別

法律や生活の選択肢を調べることは、離婚を確定することではありません。知識を得てから関係を続ける判断もできます。情報収集と最終決定を分けると、焦りを減らせます。

割合より先に確認したい七つの判断軸

ほかの人の割合より、あなたの現在に直接関わる次の項目を確認してください。

1. 安全に意見を言えるか

話題にすると怒鳴る、物を壊す、行動を制限する、生活費や子どもを使って脅す場合は、二人だけの話し合いより安全確保が先です。家族が本人へ連絡すると危険が高まる場合もあるため、公的な相談や信頼できる支援者へ安全な場所から相談してください。

2. 判断に必要な事実が確認できているか

浮気があったのか、関係が続いているのか、家庭のお金が使われたのかなど、今後に関わる事実を整理します。ただし、すべての細部を知る必要はありません。スマホの無断閲覧、無断ログイン、位置情報追跡などは避けます。

まだ疑いの段階なら、証拠がないまま問い詰める前にできることで、事実と解釈を分けるところから始めてください。

3. 相手が責任を引き受けているか

謝罪の言葉だけでなく、必要な説明をする、傷つきを否定しない、約束を守る、再発を防ぐ行動を続けるなど、現在の態度を見ます。信頼の回復は、傷ついた側が許そうと努力するだけでは進みません。

4. 心身と日常生活への影響はどうか

睡眠、食事、仕事、育児、友人関係、一人の時間が保てているかを確認します。苦しさが強く日常が続けにくい場合は、医療機関や心理・公的な相談を利用できます。

5. 子どもの安心が守られているか

「子どものために離婚しない」「子どものために離婚する」と、子どもを一つの答えに使わないようにします。強い口論へ巻き込まれていないか、生活リズムが守られているか、養育を安定して続けられるかを具体的に見ます。

6. 生活上の選択肢を把握しているか

住まい、収入、共同財産、保険、仕事、頼れる人を確認します。関係を続ける場合も、自分名義の情報や生活手段を把握しておくことは、選択できる状態を保つ助けになります。

7. 自分は何を望んでいるか

周囲が期待する答えではなく、「半年後、どんな毎日なら少し安心できるか」を考えます。夫婦を続けること自体ではなく、会話できる、連絡の約束が守られる、自分の時間があるなど、生活の姿で表します。

現実的な選択肢は二つだけではない

許し、関係をつくり直す

浮気を正当化するのではなく、傷つきを扱い、双方が具体的な修復行動を続けます。必要なら第三者の支援を使い、定期的に状態を見直します。

許せない部分を残したまま、関係を続ける

感情が変わるのを待ちながら生活を続けることもできます。その場合は、我慢を無期限にしないため、守る境界線と見直す時期を決めます。

すぐに結論を出さず、保留する

安全と生活を整え、必要な法律情報を集め、相手の行動を見る期間を取ります。保留中も、暴力や再発を受け入れる必要はありません。

別居や離婚を含め、離れる準備をする

信頼をつくり直すことが難しい、関係の中で安全や尊厳を守れないと感じるなら、離れる選択を検討できます。法的・生活上の条件は個別に異なるため、必要に応じて弁護士や公的窓口へ相談します。

調査を考えている場合は、探偵へ相談するタイミングを読み、何のための調査かを先に決めましょう。

統計は「自分の答え」ではなく「選択肢が複数ある証拠」

二つの調査で割合が大きく違うことは、どちらかが必ず間違っているという意味ではありません。人は置かれた状況や質問のされ方によって、異なる答えを選びます。現実の夫婦の決定は、さらに多くの事情を含みます。

統計から受け取れるのは、許す人も許さない人も、迷う人もいるということです。多数派に入るために、自分の感情や安全を曲げる必要はありません。

今すぐ答えが出ないときは、3分チェックで現在の段階を整理し、決断段階の記事一覧から自分に近い悩みを選んでください。割合ではなく、あなたの現在の生活と、相手のこれからの行動を材料に決めてよいのです。